お知らせ&実践研究レポート

管理したがる人たち
2013.05.01

最近、気になっていることがあります。それは、トップ・マネジメントによる「ダブル・バインド」(=二重拘束)です。「ダブル・バインド」は、文化人類学者であったG・ベイトソンの考えた理論で、簡単に言えば、次元の異なる、矛盾するメッセージを発することで、相手を動けなくしてしまう現象です。例えば、「もっと自由にやってごらんなさい」と優しく言っている一方で、失敗すると、「なんで事前に相談しなかったの!」と叱責するような、メッセージの発信方法です。これをパワーのある人がやると、やられる方は、何をどうしたらいいかわからなくなる、身動きがとれなくってしまうのです。

一部の企業では、この「ダブル・バインド」をよく目撃します。企業内ワークショップの冒頭で、「もっと主体性をもってやろう」とメッセージしている一方で、何の矛盾を感じることなく、どうやったら参加者のアクションプランを管理できるかを真面目に相談してくる経営者がいます。「ウチの社員は主体性がなくて・・・」とぼやくばかりで、ご自身のマネジメント・スタイルが社員の主体性を奪っていることに気づいていない。(かつて自分がされたように)管理しないといけないと思い込んでいる。自分と同じようにしないと成果は出せないと思い込んでいるかのようです。管理強化は不信の裏返し。マイクロ・マネジメントすることで、本当にこの不確実な時代を乗り越えることができるのでしょうか。

ミドル強化を打ち出す前に、トップ自らが襟を正す機会が不可欠です。自分は過去の成功体験にこだわっていないか。自分の持論は時代からずれていないのか。そのためには、正式な会議の場ではなく、やはり非日常の対話型オフサイト・ミーティングが最適です。目の前の現実を多面的に語りなおすことで、経営トップといえども、現実の一断面しか認識できていないことを知る。謙虚さを取り戻すことができるのです。意外と最高益を更新している企業に、既に衰退の兆しが現れているような気がしてなりません。

 

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